「食べること」とはただ空腹を満たす行為ではありません。
特に「美食」というのは、一流シェフが作り出す「芸術品」を味わうこと、その深さと広がりを理解できることだと教えてくれるのが、今回ご紹介する『美食の教養』です。
この本は、127ヵ国を食べ歩き、世界トップクラスの料理レビューアーとして知られる著者が、美食の世界の魅力を初心者にもわかりやすく解説してくれます。
美食の世界を垣間見る
本書は、単なるグルメ本ではありません。
一流料理に興味はあるけれど敷居が高く感じる人に向けて、どのように楽しみ始めればよいか、予約が取れないレストランの予約術、さらには各国の最新料理、マナーまで、役立つアドバイスが詰まっています。
そのひとつが「美食」を始めるなら、最初から高級フレンチに挑むのではなく、ラーメンやそばといった、身近なジャンルでトップクラスの味を体験することだそうです。
味覚はトレーニングしないと育たないもので、経験を積み複雑な味を理解できるようになるまで少し時間がかかるからです。
そういえば、「文章読本」の中で三島由紀夫が
”料理の味を知るにはよい料理をたべることが、まず必要であると言われております。(中略)これは、およそ趣味というものの通則であって、感覚はわかってもわからなくても、最上のものによってまず研ぎ澄まされれば、悪いものに対する判断力を得るようになるものらしい。” と書いていたのをふと思い出しました。
美食家への道は日常から
著者は、「料理を真剣に作る人に敬意を払い、真剣に向き合って味わうこと」が大切だと述べています。
その考え方は、どんな料理にも当てはまります。家庭料理でも高級レストランの一皿でも、その背後には作り手の思いがあります。
作り手の思いや技術を理解することで、食事の時間がより豊かな時間になるはずです。
ワインやお酒がない美食の楽しみ
ユニークな点として、著者自身が飲酒をしないため、お酒に関する話はほとんど触れられていません。
私はワインと料理の関係に興味があるので、少し物足りない気もしましたが、逆に料理そのものに集中した内容が新鮮でした。
お酒も料理も奥深く勉強が必要です。そしてハードルが高いものは、長く楽しめる趣味となります。
美食の疑問を解消する一冊
難点といえば、イラストや写真がなく内容が多めで、読むのに時間がかかったことです。
ただ、初心者から経験豊富なグルメまで楽しめるので、一流料理に興味がある方や、食事の時間をもっと充実させたい方にとって、新しい扉を開くきっかけになるはずです。
せっかく評判のレストランに行って「おいしかった」という感想だけで終わってしまうのか、それとも、自分でもシェフの腕前や技術のレベルの違いがわかるようになれるのか。
「美味しいものって何だろう?」そんな問いを抱える人にぜひ手に取ってほしい一冊です。
食べることは、生きること。そして楽しむこと。美食の世界への一歩を、この本で踏み出してみてください。
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